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そう呟いた大石はとても悲しげで
千宮は言葉が出なかった。
スクッと立ち上がる大石は最後に告げた。
「彼女に伝えて。
これで借りは返した。ByeByeって・・・」
そう言うと、ニカッと笑って
大石は結局酒以外口にすることも無く立ち去った。
その背に大きな重荷を背負っている者特有の
強さと脆さ、そして、虚勢を残し
大石は去って行った。
その時、貴子の元へ駆けつけよう、
そう思った訳じゃない。
苦境を知っても、迷った。
何が一番いいのか、分からなかったから・・・
そして、分からないまま、帰国した。
その後は貴子に白状した通り
迷いながらも、我慢できずに貴子の所へ行ってしまった。
それでも、と千宮は目を閉じ、息を静かに吐く。
「・・・・・・もう、諦められない・・・
この手を離すのは・・・
僕が君を逃がしてあげられるのは、今日で最後だよ。」
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