10人が本棚に入れています
本棚に追加
違う、と千宮の胸の中で
子どもが甘えるように彼を見上げ、首を振る。
そんな貴子を千宮は愛おしそうに見つめる。
「僕と一緒に行こう。」
僅かに大きく開いた瞳から
最後の雫が流れる。
千宮はそれを掬い取ると
ギュッと自制するように拳を握り絞め
額に口付けた。
「アメリカで2人で暮らそう。
何もかも捨てて、僕の所へおいで。
もう、君を一人にしない。
もう、君の心を離したりしない。
毎日、寄り添い生きると誓う。」
だから、と強く抱きしめ、千宮は祈るように呟く。
「僕にもう一度チャンスをくれないか・・・」
最初のコメントを投稿しよう!