~第一話~ ひとひらの、雪も消えゆく朝の靄

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「では、南の与力様。俺も、これで」  伊丹も、気にはなっているらしい。 「ン。そうだ、伊丹」  立ち去ろうとした伊丹を、主馬が呼び止める。 「は?」  当然、振り返った。 「楓を、泣かすなよ?」  どうやら、主馬の妹。  楓は、伊丹の元へ嫁いだ様子。 「判ってます」  胸を張って答えるからには、伊丹も泣かさない様に頑張っていると思われる。  小春日和の、麗らかな日差しを浴びつつ。  主馬は子供を差し置いて膝枕で寝ている松と鶴に溜め息を吐く。  こうして見ると、双子なのに同じ雰囲気はしない。  松は猫で、鶴は狐。  何となく、そんなイメージが沸く。 「まッたく……」  寝転がり子供を抱き抱え、腹と胸の上に頭を乗せる。  親子七人、何も無かった様に昼寝。  夕方に目覚める頃には、主馬の上に火車も丸まって寝ていた。          三 「如何かな? 傷の具合は」
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