~第一話~ ひとひらの、雪も消えゆく朝の靄

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         一  文化十四年、師走。  明るい昼間だと言うのに、そこはポッカリと人通りが無かった。  そこには遠目から見ても、子供と言える身長の人間が複数集まって何やら拳。  そして足蹴にしていた。  口許には薄ら笑いが浮かび、明らかに愉悦しんで暴力を振るっているらしい。  執拗に繰り返される一方的な暴行を、止める様な人通りが無い場所を選んで振るっている様子。  これだけ痛め付けて、尚足りないと殴る蹴るを繰り返す。  漸く終わったのは、夕七ツの捨て鐘がなった時。 「帰ろうぜ」  伝法な、下町言葉を。  纏めてると思しき子供が掛ける。  誰もが腰に二刀を差し、ゆっくりと。  親の、他人の言う事を聞きそうな良い子の顔へと戻って行く。  後に残されたのは、ボロ雑巾と表現するには痛々しい少年の姿。  髪の毛一筋程も動かず、瞬きもしない。  彼が見付かるのは、それから数刻後の事。  火の用心見廻りの辻番が注意喚起の最中、野良犬が少年の首根っこを噛んで運ぼうと横切った為。
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