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外はまだ冬の名残りが残っている。それでも、春を感じさせる鳥の声に胸が高まる。ウグイスーーではないな。メジロか、はたまたはただのスズメか。
霜が俺の家の小さな庭に張り付いていて、思わず鷲掴みしたくなる。メシャッと潰れる感覚が楽しいんだよな。
NINAは俺の頭の上でクルクル回っていた。
《ご主人様の頭はクルクル…》
コツンと頭をぶつけて落ちる振りをする。
《パー》
俺は仕方なく笑ってやった。
「パー」
NINAが嬉しそうに跳ね回る。
俺は仕返しにNINAの顔の前に人差し指を突き付けて、グルグル円を描いた。
「赤トンボ、この手に止まれ」
NINAが俺の指に齧り付く。
「イデェよ!!」
俺達は何とか馬鹿げたことをやることで、疎外感を晴らしていた。
誰も俺を見ない。
本当に死んだのなら、零水礼央として生き返りたい。生まれ変わるとかそういうのは余り考えたくなかった。
俺は零水礼央の人生が欲しいんだ。もっと、女の子と接したかったんだ。土子は良い子だよ、だけどな、相当暗い女だ。惚れてはいる。それでも、男は浮気する生き物なんだぜ?
NINAは俺が少し寂し気な表情をしているのに気付き、気の毒そうに俺を見た。
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