第1章

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人気者は辛いとか暇人は羨ましいとかそんな類いの言葉が人として出て来て、当たり前だとすれば、俺の身の回りには妙なことが起こっていると言えるだろう。 NINAは俺のことをカメレオンと呼んだ。それは強ち間違っていない。両親も無言で俺の側から離れるし、友達の土子(ツチコ)も俺の存在に気付かないことが度々ある。それは俺が自己主張しないからとか、俺が地味だとかそんなんじゃないんだ。 まるで俺が幽霊になったかのように誰も俺を見ない。見てはいけないものが取り憑いているとすれば、NINA、お前だ。 何だって? 俺が偉そうにお前の名前を呼んでいいはずないだと?傲慢なヤツめ。今夜は寝かせないからな!なんちって。 まず、NINAのことを話さないといけない。 俺は宇宙人を幼い頃目撃し、助けた。察しの良いヤツは分かるだろう。そいつが宇宙人の娘、NINAだった。そいつは無理矢理、涙を作って見せ、《ほら、泣いているじゃない?助けて》と確かに喋った。 いや、驚いたどころではない。NINAは全身に火傷を負っていた。酷い腐敗臭がした。それでも俺はしばらく動けなかった。 やっと動いたのは政治家の黒い車が視界に入ってからだ。 NINAはそれ以来、俺に取り憑いている。
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