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その何者かを想像すると実体感を持ち始め、永遠と走っていた俺の足が鉛を帯び、頭の中でグルグルと円を書いた。円?そうだった、サークルが俺と他者を繋いでいる。
何者かは赤い目と羽でひょろりとした体格をし、小さく跳ね回っている。まるで宇宙人だ。いや、実際、宇宙人じゃね?
何かマズいことが起こっている。
必死に名前を思い出そうとした。
《必要ないわ。NINA》
俺はNINAを見た。途端に俺の影からフワフワした空気がなくなる。
周りの人も異様な俺の走り様を無視した。
「NINA、土子はどこにいる?」
《その前に、〝俺は人間〟と言って》
その時になって思い出した。
ルール2.仮の動物に成り切って話す
土子はそれを守らなかったから、影を奪われたんだ。
俺が土子に影を返す方法があるとすりゃあ、カメレオンから素の自分に戻りゃあいい。
簡単なことだ。
なのに、俺は泣いていた。
せっかく手にした影が恋人を発狂させているなんて、気分最悪だぜ?どうせなら死んでもいいヤツの影が欲しい。土子は守らなけりゃ男じゃねえよ。
土子の住所を突き止めるより先に自宅に着いた。
NINAはいない。
ただの硬い使命感だけで驚いた顔をした両親を無視し、ノートパソコンを立ち上げた。
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