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「芽愛(メア)は俺に一方的に惚れているだけだ。俺はお前の方が…」
「嘘よ!!」
何だ?この修羅場?
土子モドキが泣き出しそうな声で苦痛に叫ぶ。
「私の誕生日プレゼントが安物のネックレスで芽愛さんへのプレゼントが本物のルビーってどういうつもりなの?」
「それは…」
「最初から分かってた。私は零水君に似つかわしい女じゃないってことぐらい。それぐらいなら、一緒に死にましょ」
俺は土子モドキの手にキラリと光る包丁があるのに気付き、慌てる。マジかよ。ライオン、何してくれてんだよ。
「土子、俺を殺せ!」
俺は自分の耳を疑った。何言ってくれてんだよ、俺。
「給料日が予定と違ったんだ。お前の誕生日プレゼントまでに入るはずだった金、全部、俺の初歩的なミスで失っちまってな。バイトでまたお前に本物のルビーより良い物、買ってやるから、機嫌直せ」
土子モドキが最初疑わし気に俺を見つめる。俺が微笑むと、包丁を落として、泣き出した。
「零水君、やっぱ、好き過ぎて辛いの。殺したいぐらい好きなの。ごめんなさい、ごめんなさい…」
俺はワイルドに構える。
「殺したければ、殺せ。ただな、お前まで死ぬのは許さんからな」
俺は確信した。
この俺は〝俺〟じゃねえ。
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