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放課後は土子とトボトボ、下校だ。土子は実は今年の始めにできた初めての女友達だ。だけど、まあ、無口なヤツだけあって、気まずいだけだな。
最初からこう言えば土子は俺から離れたかもしれない。《SEXさせろ》。
俺の罪があるとすれば、土子まで巻き込んじまったことだ。本当はあの放課後の図書室での寝顔に惚れちまってた。土子は涎を垂らしながら幸せそうに、「零水君」と俺の名前を呼んだ。
ゼロミズじゃねぇ!レイスイだっつうの。
俺の名?零水礼央(レイスイレオ)。俺礼央。上から読んでも下から読んでも俺礼央。なんちって。
こんな境遇だからこそ、お笑いネタに走るもんさ、人間ってヤツは。まあ、もう俺、死んでるけどな。
それでも土子は俺を見るから不思議なんだ。
「零水君、今日もありがとう」
俺は土子のショートと眼鏡を目に焼き付けた。何となく、また忘れそうな気がした。
「何、言ってんだ?土子。それより、夕日が綺麗だぞ」
土子が俺の耳に唇を近付ける。心臓の鼓動に驚いちまった。
「零水君、いつもありがとう」
俺は夕日に走って行った。
「夕日の馬鹿野郎!!!」
戻って来るとドキッとするような土子の笑顔が待っていた。
「零水君、面白い」
俺は苦笑する。
「そこはお前、『海の馬鹿野郎よ』だろ?」
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