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「とにかくだ。いつでもちゃんと見守っているからな」
「見守っているだけ?」
「贅沢言っちゃいけないよ、里菜。死んだ親にまですがろうなんて、それは虫が良すぎるぞ」
「ごめん」
「でもな、やっぱり自分の家族はいつまでたっても愛おしいものだよ。それは永遠に変わらない。何代たっても同じ。出来る限りのことはしてあげるが、結局は本人の努力次第だからな。この先どんなことがあっても、それだけは忘れるなよ」
「わかった」
「そう言えば、この旅行だって、けっこう難しかったんだぞ。まずは、沙也加って娘」
「沙也加がどうしたの?」
「あの娘の話を聞いてハワイ旅行のことを思い出したろ?」
じゃあ、あれはわざと? 沙也加が私に旅行の話をして、それで私が・・・。
「それから、セレブ婦人。お前、ああいうタイプ嫌いだろ?」
反発すれば、私が妄想旅行なんていうバカげたものを申し込むって思った・・・。
「パパ、もうお説教はそのくらいでいいでしょ。ほら、夕陽」
「おお、きれいだなぁ。さあ、思いっきり楽しもう」
パパは本当に楽しそうに、ハワイ島の海に沈む夕陽を眺めていた。
何が妄想で、どれが現実なのか。
私にはよくらない。
でも、とにかく、今この瞬間を楽しもう。
それで充分だ。
END
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