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「いつでも、どこへでも。そしてどんな人とでも一緒に過ごせます。一緒に過ごしたい人は? 生きている人でもお亡くなりになっている方でも、どなたでもお好きな方とご一緒に」
そう言われて自然に口にしたのが、パパのことだった。
3年前に家族3人で行ったハワイ島の旅行を、またしたい。
そう願った。
「ドア、開けてよ」
「おっ、ママが来たか。里菜、ドアを開けてやってくれ」
何のことかさっぱりわからないまま急いでドアを開けると、そこにはママが立っていた。しかも、しっかりと旅行用のトランクを持っているし、服装もリゾートバージョンだ。
「えっ、えっ?」
里菜の混乱をよそに、ママは部屋へ入ってくるなり、パパの元へ。
「よう、ママ。元気そうだな」
まるで昔と同じだ。
いつもの様子を見て、里菜の頭の中は混乱した。
ママは、この普通ではない状況をどう思っているのか。
ママに尋ねてみても、何を当たり前のことを言っているのかと言わんばかりだ。
パパも同様だ。
自分だけが何も理解していない無知な子どものような気分。
パパが癌でこの世から去ったのは3ヶ月前のこと。
通夜も葬儀も盛大だった。
通夜に訪れた弔問客は300人近く。葬儀場の人も驚くほどだった。
親戚はもちろん、退職したにもかかわらず会社の人も大勢訪れた。町内の人や、近所の商店街の人たちもたくさん来た。
パパは、いつでもどこででも、誰にでも話しかける癖があった。
飲食店に入ると、注文を取りに来るウエイトレスに、
「キミは丁寧な話をするね。親御さんの教育が良かったんだね」
「珍しい名前だね、生まれはどこだい?」
そんなふうに声をかけるのは、礼儀の1つとでも捉えているようだった。
数十年通い続けていた理髪店では店主の相談に乗り、親戚の子どもの就職の世話をしたりなど、面倒見も良かった。
有無を言わせぬようなところもあったが、その分、押しも強く、様々なもめ事をうまく解決し、周囲の人たちからは一目置かれていた。
病の床についているとき、
「オレは、生きている間にこれといったことは何も成し遂げられなかったなぁ」
と無念そうにしていけれど、本当はそうじゃなかったと、里菜は通夜に訪れた弔問客が流した涙の量で知った。
「ところでパパ、どうして49日の間に出てきてくれなかったの?」
死後の49日間は、この世とあの世をさまよう期間。
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