第1章

8/8
前へ
/8ページ
次へ
「とにかくだ。いつでもちゃんと見守っているからな」 「見守っているだけ?」 「贅沢言っちゃいけないよ、里菜。死んだ親にまですがろうなんて、それは虫が良すぎるぞ」 「ごめん」 「でもな、やっぱり自分の家族はいつまでたっても愛おしいものだよ。それは永遠に変わらない。何代たっても同じ。出来る限りのことはしてあげるが、結局は本人の努力次第だからな。この先どんなことがあっても、それだけは忘れるなよ」 「わかった」 「そう言えば、この旅行だって、けっこう難しかったんだぞ。まずは、沙也加って娘」 「沙也加がどうしたの?」 「あの娘の話を聞いてハワイ旅行のことを思い出したろ?」 じゃあ、あれはわざと? 沙也加が私に旅行の話をして、それで私が・・・。 「それから、セレブ婦人。お前、ああいうタイプ嫌いだろ?」 反発すれば、私が妄想旅行なんていうバカげたものを申し込むって思った・・・。 「パパ、もうお説教はそのくらいでいいでしょ。ほら、夕陽」 「おお、きれいだなぁ。さあ、思いっきり楽しもう」 パパは本当に楽しそうに、ハワイ島の海に沈む夕陽を眺めていた。 何が妄想で、どれが現実なのか。 私にはよくらない。 でも、とにかく、今この瞬間を楽しもう。 それで充分だ。 END
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加