0人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわ!綺麗な向日葵!僕も好きなんです、向日葵!」
えっ……
帽子を深く被った少年が、元気よく声をかけてきた。
「あら、そう!綺麗でしょ? この人が大好きだったの。何も言わずに天国に行ってしまったけどね。」
「この人、お姉さんの元カレ?」
少年が墓を指差し尋ねる。
「ふふっ、当たり。」
「へ~。え?なに何?」
急に少年が墓に耳をくつけた。
「ふむふむ。」
「あら、何してるの?」
少年が、眉間にシワを寄せて何やら会話をするフリをしている。
「お母さん、心配しちゃうよ?大丈夫?お母さん、近くにいる?」
「ふむふむ。ププッ!」
急に手を口に当て、少し笑った。
「お姉さん、そそっかしいから気をつけなきゃ駄目だよ、だってさ。もうスリッパで外に出ないように。」
「え?何それ?……」
少年はそれから何も言わずに、私の大きなお腹を優しくなでて走って去ってしまった。
何だったんだ。あの子……。
さて行くか。じゃあね。頑張って元気な子を産みますからね。
私はもう1度拝んでから、彼の墓を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!