第1章

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スタッフの女性に目を戻すと、 彼女は優しく微笑んでいた。 その笑顔は、 とても嘘を言っているとは思えない。 『お前は、 人を信用し過ぎる』 と父の叱る声が聞こえてきそうだった。 こんなのバカげてる。 そもそも5万円ポッキリで、 でこへでも何泊でもなんてうますぎる。 確かにグアム・サイパン・韓国といった近場なから安いプランもあるけど。 「まだキャーンペーン間に合うかしら? 友達から噂を聞いてやってきたんだけど」 ちらと目をやると、 いかにもセレブといった風情のご婦人が、 キャスター付きのカバンを携えて立っていた。 トンボの目玉を連想させるような大きな丸形のサングラスを頭に乗せ、 シャツのエリを立てていた。
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