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「そーいうまどろっこしいの、オレ嫌いなんだよね。2人ぶっ殺せばいいんだろ」
「……相変わらず、物騒な台詞を簡単に言う」
「ははっ、大陸戦争の英雄がナニ言ってんのさ」
けたけたと愉快そうに笑うが、ジェイの目は笑っていない。
「昔ッからあんたはそうやって綺麗事ばっか。結局オレに依頼するくせに」
「責めるなよ。これも仕事だ」
「責めちゃいないさ。ただ、そういうのがムカつくだけだよ」
ふたりはそれ以降しばらく喋らずにグラスを傾けていたが、ややあって、ジェイが口を開いた。
「大戦の時はホント、容赦なく殺せたよな。最後の方は敵なのか味方なのか全然わかんなくなってたけど、それも楽しかったし」
「お前のはわざとだろう」
「あれ、そう見えた?」
「2度狙われた。3度目はさすがに配置を変えたがな」
「あ、バレてたか。あんた見ててムカつくから、とりあえずやっとこうと思ってさ」
くくっと笑うジェイを尻目に、トリノは浅く溜め息を吐くと、テーブルに数枚硬貨を投げた。荷物を両脇に抱えて立ち上がる。
「長居したようだ……報酬は、いつも通りで良いな」
「いいよ。あ、あのさあ」
ジェイの言葉に、トリノは立ち止まる。
「犯罪者を裁くなら、別にこそこそとしなくてもいいんじゃない?それとも、オレにやらせたい理由でもあんの?」
「魔法相手に戦える奴がいれば、間違いなく俺の部下に頼んでるさ……まあ、いないわけではないが、一癖ある奴でな」
「何そいつ?」
「いや……それはこちらの話だ。まあ、信頼してるんだよ、お前をな」
肩をすくめ、トリノは去っていった。
「…………信頼だってさ。ウレシイなぁ」
トリノの背中を見送ったジェイは、バーカウンターの向こうでグラスを磨いていたバーテンに声をかけた。
黒色のスーツに黒髪のボブ、ループタイの男。年齢は20代後半だろうか。
男は手にしたタオルをテーブルにぽいと投げると磨いていたグラスを置き、透明な液体の入った自分のグラスを傾けた。
酒に弱いのか、液体を口に含んだ男の顔は、たちまち赤みを帯びていく。
細い黒眉を吊り上げ、男は乱暴な視線をジェイに向けた。
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