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「町内の奴らは、行商に行ってるやつらを除けば全員いたよ」
「それは良かったですね。では旅人でしょうか。強い方ならいいですが、やはり心配ですね」
「町に寄らなかったのか、それともすぐに町を立ち去ったのか知らねえが、万が一、旅人があの森に行っちまったんだったら、無事じゃ済まねえだろうな……。あそこが迷いの森だって知ってりゃ、行かずに済んだろうに」
悔しそうにジョッキを干すウッドボウを見つめ、サリヴァンは新たなジョッキにビールを注いだ。
「そんなに気に病まないでください。さあ、これは私のおごりです。後でいつもの皆さんにも奢りますから、楽しく呑みましょう。きっと大丈夫ですよ」
「サリヴァン……あんた本当にいい奴だな」
ウッドボウは、隣にジェイが座っていることすら忘れている様子で、しみじみと語り始めた。
「ついこの間バイトで入ってきたばっかの時は、気持ちわりぃおかっぱ野郎が来たって俺たち噂してたんだぜ。それがどうよ、店長が行方不明になってからも店を開けてくれてよぉ。しかも俺たちの心配なんかしやがって」
横で意味ありげな薄ら笑いを浮かべるジェイに気付き、バーテンは一瞬ひきつった顔になるが、すぐまた元のような微笑を浮かべた。
「……これでも、この髪型には満足しているんですよ」
「だろうな。だと思ったぜ!」
がははと大きな声をあげて笑うウッドボウのそばに、残りの客が集まってきた。
日没が近いらしい。酒場には、徐々に客が増えつつあった。
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