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--……あの魔導師、やっぱりどこかで見た事がある。
歩きながら、ジェイは先程トリノに見せられた写真の魔導師について思い出そうとしていた。
大戦の時、戦場で顔を会わせたか、それともどこかの酒場に偶然居合わせたか。
どちらも当たっているようで、どちらも違う気がした。
夢から醒めたらその夢の内容を忘れてしまうように、魔導師についての記憶も、靄の中に漂っているように曖昧だ。
別に大したことではない。
自分と関係の無い人間、しかももうじき自分の手で殺されようとしている男が、生前どこで何をしていたのか、そんなのどうでもいいとさえ思う。
思うのだが…………。
「強い魔導師サマなら、やっぱ大戦の時に雇用されてたのかなぁ……のわりには、オレの管轄で激しい魔法が使われたなんて記憶に無いけど」
大戦時に、ジェイが傭兵として派遣された町は3箇所、どれも銃撃戦がメインの戦いだったはずだ。
ジェイは、道に迷わないようにと壁に付けていた右手を離し、ぽりぽりと顎を掻いた。
ここから先の道は、大して難しくはない。
路地を抜け、少し広くなった道路を左折。二軒隣が泊まっている宿だ。
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