第2章 【霧の町】

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大切な事を忘れている気がした。 いや、実際に忘れてしまったことは沢山ある。 ジェイは幼い時に、通称「何でも屋」、レイヴン商会の社長に拾われ、育てられてきた。 両親や、住んでいた場所の記憶は持っていなかったが、それでも特に困ることはなかった。 大きくなり、武器の扱い方を覚えると、自ら進んでこの仕事を覚えるようになった。 大陸屈指の大企業であり、暗殺や密売代行など裏の顔を持つこの会社にいれば、いずれ自分の過去を知る者が現れるかもしれないという淡い期待を持って。 そして、自分が知っている「はず」の魔導師が、目の前に現れたのだ。 ……あの魔導師が何者で、自分とは何の関係があるのか。 実際に会えば、あるいは、自分の過去について思い出せるかもしれない。 例え思い出したところで、両親に会いに行こうとか、この仕事をやめようとか、そういった事は全く考えていないのだが。
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