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「…………ん、」
ようやく目の覚めたチェルシーが、薄くまぶたを開けた。身体を起こし、まだ痛むのか、左肩に手を当てている。
「ここ……」
「気がついた?」
オレが近くにいるとは思いもしなかったんだろう。ぱっと目を開け、オレの顔を凝視する。
「ジェイ……?!」
慌てて自分の両手と、両足を確認するチェルシー。
そうだよな。なんたって敵に食いちぎられたはずなんだから。
「あれ?!あれっっ?!」
今度は自分の両手とオレと魔導師、順番に見てから、ふらふらと立ち上がろうとした。だいぶ混乱しているみたいなので、チェルシーの肩を押さえて座らせる。
「ジェイ、私、羽の生えた変な魔物に食べられたはずなのに、あれ??なんで??」
「落ち着けって。森の中にあった城の中庭で倒れてたんだ。多分、疲れて幻でも見たんだろ」
「う、うん……そうかな……?」
チェルシーはまだ納得いかないようだった。
「服も森の中歩いてるときにひっかけたんだろ。大した傷じゃないよ。ホラ、肉焼けてるからさ」
「……うん」
肩と脇腹の服の破れはかなり酷かったが、とりあえずチェルシーを落ち着かせることができた。
このことは、チェルシーが夢を見てたってコトで終わらせればいい。曖昧になれば、そのうち忘れるだろう。
「おい貴様」
魔導師が、ぶすっとした顔でチェルシーを見ていた。
さっきまでの心配した顔はどこへやら。何だかすごく不機嫌な様子だ。
おーい、混ぜっ返すのはやめてくれよ。
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