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「あれっ?2人とも、こんなところでお昼ご飯食べてるの?」
横から声が聞こえた。声のした方を振り向くと小柄な女子生徒が立っていた。
「千夏じゃん。いやぁ、今日俺たちのクラス席替えがあってさー。そんで恭介の席がここになったんだ。最悪でしょー!クジ運ないよねぇ」
「お前に言われたくないんだけど」
翔太に千夏と呼ばれたその小柄な女子生徒は、隣のクラスの鈴原千夏(スズハラ チナツ)。綺麗な黒髪と、優しげな目元が特徴的な幼なじみで、俺の自慢の彼女だ。
「恭介、大変な席に当たっちゃったみたいだね。こんな日差しじゃカーテンも意味ないかぁ」
「まあな。でも教壇の真ん前の席を引き当てた誰かさんよりはマシかな」
「お前はそればっかり言うなっつーの!で、千夏はどうしたの?なにか用があって来たんでしょ?」
翔太の問いかけに千夏はあぁ、といった様子で答えた。
「ここに奈美(ナミ)来なかった?恭介と翔太に今日の放課後のこと相談しに行くとか言ってたんだけど…」
「奈美が?来てないよな?」
俺が聞くと、翔太は箸を咥えたまま眉間にシワを寄せた。奈美とは千夏と同じクラスの佐伯奈美(サエキ ナミ)という名前の女子生徒で、こちらも幼なじみ。翔太の彼女でもある。
「奈美ぃ?来てないな。今日の放課後がなんなんだ?てか、あいつに席替えのこと知られたら絶対馬鹿にされるよ…」
そう言いながら翔太は頭を抱えた。なんつーことに心配してるんだか。そんな翔太の様子を見て千夏はクスリと笑った。
「なんかね、奈美が好きなゲームのキャラクターのUFOキャッチャーが駅前のゲームセンターにできたんだって。恭介、UFOキャッチャー得意でしょ?一緒に来てほしいって言ってた」
「おー!そういや最近、ゲームセンター行ってなかったな。千夏も行くんだろ?俺も行くよ」
「わかった。後で奈美に伝えて
…」
「ちょっと待て!あいつなんで俺じゃなくて恭介頼ってんだよ!!俺を頼れよ!」
「お前UFOキャッチャー下手くそじゃん」
ハンッと鼻で笑うように言うと、翔太は悔しそうに歯ぎしりした。
弁当を食べ終えた後はいつも通り、翔太と千夏とくだらない話で盛り上がり、そのまま昼休みの時間を終え、午後の授業を受けた。俺が太陽熱との死闘を繰り広げてる間に、教壇前の座席で盛大ないびきをかく男子生徒の頭には3回ほど、教師からのチョップがお見舞いされていた。
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