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『百合さん』
どこからか私の名前を呼ぶ声がした気がするが、なんだ?なにかがおかしい。
『やっと目が覚めたようですね。』
声が耳から入ってきていない。目尻の横から声が流れ込んできているようだった。
『見事、百合さんはこのゲームを勝者として終えました。お疲れ様でした。』
ゆっくりと丁寧な口調で話しているはずなのに、とても冷たく感じるその声は、聞き覚えがある。
聞きたくない。その声が一言話す度に寒気と異臭が私を襲う。
黙れ。黙れ黙れ黙れ!!!
『ただ、あと少しだけ、百合さんにはやることがあります。』
…やること?まだ私になにかやらせる気なのか?
『なあに、百合さんは何も考えなくていいんですよ。こちらでどうにかできるので。』
…なにを言っているんだ?
私にはもう、何かをする気力も体力もない。
このまま、永遠の眠りについてしまいたい。
『これが終われば、百合さんは完全に自由の身ですよ。権力と金を振りかざすことしか能のないあの豚共に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。』
なに?なにを言っているの?
早く私を眠らせて。
『私と話すのもこれが最後です。それでは百合さん、さようなら。残りの人生、悔いのないように生きてくださいね。それができなかった者のためにも。』
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