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「あっちぃよー」
風通しの良い窓側最後尾の席。ここで高校生の橘恭介(タチバナ キョウスケ)は、最高のお昼寝タイムを送るはずだった。
しかしどうだろうか。自分に向けられるのは風だけでなく、カンカン照りの太陽の光。涼しいはずの風も、この太陽の下では熱風にしかならない。先ほど行われた席替えで、俺はここの席に移動してきたのだ。席替え直後はいい席に当たったと喜んだが、現実はこの通りである。
「干からびるー。死ぬー」
そういいながら机に突っ伏す。こんな状態で寝れるわけもない。せっかくのお昼休みがこんなことで終わってしまう。どこか涼しいところに移動しようか。しかし、そんな気力すら奪われはじめていた。
「おーい、恭介。恭介くーん」
前から名前を呼ぶ声がした。重たい頭を上げると、1人の男子生徒がニヤニヤしながら机の前に立っていた。幼なじみの浅野翔太(アサノ ショウタ)だ。茶髪の髪が太陽の光を反射し、目の前がさらに眩しくなる。
「…なんだ翔太かよ」
「なんだってなんだよ。わざわざこっちまで来てやったのに。弁当食おうぜー」
「見てわかんないのか。俺は今暑さに負けて伸びきってんの。お前の相手なんてしてらんないの。弁当くらい1人で食えよ」
そう言い残し、俺はまた机に突っ伏した。そんなことは御構い無しに翔太は前の席から椅子を借り、弁当を広げ始めた。
「この程度の暑さに負けるなんて、ひ弱だなぁ恭介は!ま、俺は窓から遠い真ん中の席からだから、暑くないもんねー」
「真ん中は真ん中でも1番前じゃねーか。せいぜい居眠りしないことだな」
「絶対無理だよ。どうしよ俺、留年したくないよ。恭介、席変わらない?あそこなら暑くないよ?」
「居眠りが先生にバレて冷や汗かくくらいなら、ここで暑くて汗かいてた方がマシだ」
「ちくしょー!」
翔太は足をバタバタさせながら弁当を頬張る。翔太は翔太で昼休み明けの授業は眠気と戦うことになるだろう。いや、どの授業でも戦ってるかもしれないが。
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