第1章

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息子が大学を卒業すると、東京の会社に就職するからと言って、息子は家を出て行った。 私には何の相談もなかったが、妻は息子の住む部屋を見に行ったらしく、何枚かの写真を見せてもらった。 駐車場から1台息子の車がなくなったが、玄関のスリッパ置き場には大きな水色のスリッパが一番取りやすい場所に置かれていた。 「いつでも気軽に帰ってこい」妻のささやかな願いだ。 ※※※※ 「貴方、明日拓也が帰って来るわよ。 午後からは予定入れないでね。」 妻が珍しく息子の帰りを教えてくれた。 家を出た息子は毎週末帰って来ていたが、月1回になり、2ヶ月に1回になり徐々に帰らなくなっていた。 ふと気付くと妻のスリッパが小豆色に替わっている。 スリッパ置き場には水色のスリッパの隣にピンク色のスリッパが。 妻は複雑そうな表情をしている。 明日はステテコ姿でなく、スラックスを履いて息子を出迎えるとしよう。
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