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「もう帰って。そして会うことはないわ」
美紀はそう言ってドアの方まで誠を押した
しかし、男の力には勝てない
誠は美紀を抱きしめる
「いつものようにジュースを飲んでるだろ?あの頃から香水も変わってない。そして、嘘をつくとき目をウルウルさせるところも」
大学時代、2人が出会ったあの頃から変わっていないことも誠は気づいている
「美紀は馬鹿だな」
「馬鹿じゃない。もう帰って」
「帰らない」
「どうして」
「俺の愛して止まない美紀におよそ10年ぶりに触れてるのに美紀は嘘ついているから」
「他の女にもそんなこと言ってるんでしょ。もう帰って」
「お前が流産したことを気づいて知らないふりしたんだよ」
誠はわかっているのに知らないふりをする優しさを持っている
「だから、俺は美紀しか見てないんだ。ごめんな、あの頃、親父を捨てていたらこんなことにはならずに済んだのに。ごめんな、俺がダメな奴で」
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