旅猫の旅の出発

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 こういうとき、我々猫に残された手段は二つ。  ひとつは、大きな車(トラック)の荷台に隠れて荷物といっしょに運搬されるか、もうひとつは大きな船(運搬船や豪華客船)に乗ってネズミ捕りとして雇ってもらうか。すなわち、陸路か海路。  空路にいたっては、チャレンジ精神の旺盛な奴は人間に捕まるのを覚悟で、空飛ぶ船(飛行機)に飛び乗ることもあるらしいのだけれど、ぼくには空を飛ぶこと自体が恐ろしいことのように思えて、そんなことは最初から選択肢になかった。  もちろん、これらの話は飼い主のいない猫の場合の話で、飼い主に可愛いがられている猫たちは、車にでも列車にでも、船にでも空船にでも、飼い主に連れられて自由に移動できるらしい。  ぼくにも昔みたいに飼い主がいれば、もっと楽に移動できるのだが。それも猫の言葉を理解できる、あのひとみたいなニンゲンが現れてくれれば…。  過ぎたことをふりかえるのはよそう…。もうぼくはひとりで生きてゆくと決めたんだ…。
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