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その週末の金曜日、仕事が終わるとスマホを肌身離さず持っていた。
何故なら金曜日はいつも彼が来る日だからだ。
……たまに来ない事もあったけれど。
それでも来るかもしれない思いを捨てきれず私はスーパーに寄って買い物をした。
井野くんの好きな食べ物や、お洒落なつまみ、誕生日なのかってくらい買い出しをして家に帰った。
そして沢山料理を作ってラップを掛けて机に並べた。
みるみるうちに机の上が豪華になっていく。
だけど、それとは反対にお皿が一つ机に乗る度、私の不安は一層増していった。
「よしっ。出来た!来るにしてもまだ時間じゃないし……。」
そう言って一人でお皿に取り分けてビールを開けた。
「頂きます。」
パチンと手を合わせ一口、くちにした。
モグモグと噛むが、喉元を通っていかない。
……本当は分かってる。
今日、井野くんは来ないってこと…。
飲み込めないつまみをビールで流し込んだ。
「井野くん……会いたいよ…。」
誕生日のような机の上とは真逆に私は1人膝を抱えて泣いていた。
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