第1章

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もしもこの世にキミと僕しかいなかったら、僕はこんなにふらふらと迷うことはなかったのに。 こればかりはどうしようもない。 男の性、なんて狡い言葉で誤魔化したくはないけれど。 だって彼女はキミよりもずっと甘え上手の淋しがり屋で、何より手放しで僕が好きだと全身で訴えてくる。 僕の太腿に跨って胸板に頬ずりして、引き剥がそうとすると切なげな目で見つめてくるんだ。 首筋に舌を這わせて、耳にかかる吐息は熱く、その息はともすれば苦しそうにも感じられるほどあがっていて。 もう少しも我慢出来ないと切羽詰まったみたいに、僕を必死で求めてくる。 キミがそこまで強い女ではないと僕は知っているのに。 本当はこんなの目の前で見せられて、耐えられないに違いないと、頭では分かっているのに。 僕のツボを心得た彼女が、巧みにそこを刺激しながら誘惑するんだ。 『ねえアナタ、本当は私が可愛くてしょうがないんでしょ? 抱きしめて全身を撫でまわして、今すぐ思いきり可愛がりたいんでしょ?』 その通りだ。 だって彼女は、僕が世界で二番目に好きな女なんだから。 『いいのよ、好きにして』 この誘惑に、抗えるわけがない。
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