第1章─記憶─

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「はぁ~…なんか良いことないかなぁ…」 いつものお決まりのセリフを吐き溜め息をつく。趣味や好きな事もあまりなく、頭の中はいつも仕事か勉強の事ばかり。 「そりゃこんな事ばっかり考えてるんじゃ溜め息もつ──」 そう独り言を言いかけた時。 さっきまで晴れていた空が黒い雲にたちまち覆われた。カラスが何匹も慌ただしく鳴きながら飛び交っている。しまいには黒猫が道を横断し、畑へ逃げて行った。 「……何なのこれ」 何か不吉な事が起こるに違いない。 そう思わせるように、思い込ませるように履いていた靴の紐も切れていた…。 駐車場に車を止め、マンションへ入っていく。不吉さを物語るようにエレベーターの電気が点滅している。だんだん鳥肌がたって…恐怖を感じる。家の前に立つと空が光りすごい音がした。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!! 早る気持ちを抑えながらゆっくり玄関のドアを開けるとそこに…………。 男 「…おかえりなさい」 赤い目に鋭いキバ。長めの耳に色白の肌。黒髪の天然パーマに…低い身長の…男が居た。男は真っ黒服に長いマントを引きずりながらこちらへ歩いてくる。 うちの家には女しかいない。なのに男がうちの玄関で「おかえりなさい」なんて言っている。 「……どちら様?」 私は睨み付けながら答えた。携帯を隠し持ちながら1・1・0と押す。 男 「あ。言い忘れていましたが警察に電話をしても無駄ですよ」 (何言ってるの…コイツ…!) 自分がしようとした事が詠まれている。焦りと不安が顔に出ないように気を付けながら答える。 「質問に答えなさい。…あなたは一体なんなの?」 男 「何と言われましてもねぇ……吸血鬼……でしょうか?」 すっとぼけの顔で首を傾げながら答える。 「はぁ?」 ヤバイ。頭おかしい。薬物でも飲んでいるのだろうか…。それならなおの事警察に… 妹 「おねえちゃん?独りで何ブツブツ言ってるの?早く入りなよ」 妹が男の身体をすり抜けて出てきた。 「ちょ…!あかり!(妹)大丈夫!?」 あかり 「何が?」 「いや…っ…その…」
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