第3章 障子の向こう

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結果だけ言うと、何も映らなかった。 外には僕の部屋が映るようビデオカメラを置き、部屋でも影を撮影した。 するとやはり中のビデオカメラには影が映っていた。はっきりと、動きもわかるぐらいに。 それなのに外のカメラには何も映っていなかったのだ。そこには僕の部屋と、草が風に揺れる映像しかなかった。 僕は動揺した。カメラにも映らないのに影だけはある。やはり何かとんでもないものなのだ、と。 さらにこの事で僕は寝不足がちになり、会社での仕事の進みが遅くなった。上司からは怒られ、同僚にも体調を心配されるようになっていた。 どれもこれもあの影のせいだ。あの影が僕の人生をめちゃくちゃにする。そんなことされてたまるか……! もう手段を選んでいる必要はない。思い切って障子を開けることにした。最近になり、体が固まることはなくなり、自由に動くようになっていたからだ。 そして今日。ついに実行する日になった。緊張で口の中が渇く。寝不足だからか、頭痛がしてくる。 時間になった。影が現れる。そいつはいつも通り僕の部屋の前を通る。 しかし思ったがこいつは僕に危害を加えることはない、何故だろうか。いや、そんなことは関係ない。今はこいつの正体を見破るだけだ。 今開ける。正体が明らかになったらこの手帳にその事を書こうと思う。 何が出てきてももう僕は怖くない。これ以上の恐怖を味わったとしても構わない。必ず正体を記す。 もし僕が死んでしまったら、これを読んでいる君にだけはせめて知ってもらいたい。まずこれを伝えるために日記なんていうめんどくさい形を取っていたのだが。 ……よし、決心はついた。開けることにする。何が出ても僕はもう大丈夫だ。必ずその目に影の正体を見破ってやる。
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