第1章

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「・・・・なんでおばあちゃん、この写真をわたしに残したんだろ?」 「妖精を探しに行けって意味とか?」 「なんで!?」 「なんでって、あなたがそういうの見える子だからでしょう」  母の言葉に思わずマヌケな声を上げた。 「へ?」 「へ? じゃなくて、忘れちゃったの? あなた子供の頃、妖怪だの妖精だの幽霊だの、良く見てたじゃないの」  まったく記憶にないので、ただ母を見返した。 「やあね、本当に忘れちゃったのね、一つ目とか、地縛霊とかしょっちゅう見てて、時々見えない子たちとも遊んでたのに」 「わたしが!?」 「そうよ、そういえばいつの頃からか言わなくなってたわね」  思い返してみたけれど、記憶喪失かっていうくらい、子供の頃の記憶が無い。 「・・・・やだ、なんでなんにも覚えてないの?・・・・」  過去の記憶がない。 その事実にわたしは恐怖すら感じた。 青ざめているわたしを見て、母は優しく微笑んだ。 「だったら探してらっしゃい」 「え?」 「この場所を探せば、きっとあなたの記憶も戻るんじゃない? そんな気がする、そのためにおばあちゃんもこの写真をあなたに託したのよ」 「ここへ行けば記憶も戻る?」 「ええ、きっとね」  おばあちゃんが妖精達と過ごした場所。そこがすべての原点なのかも知れない。  そこへ行けば失った記憶も取り戻せる。 その思いはやがて確信へと変わっていった。  わたしが、おばあちゃんの写真を胸にイングランドへ旅立ったのは、それからしばらくのちのことだった。                               END
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