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「・・・・なんでおばあちゃん、この写真をわたしに残したんだろ?」
「妖精を探しに行けって意味とか?」
「なんで!?」
「なんでって、あなたがそういうの見える子だからでしょう」
母の言葉に思わずマヌケな声を上げた。
「へ?」
「へ? じゃなくて、忘れちゃったの? あなた子供の頃、妖怪だの妖精だの幽霊だの、良く見てたじゃないの」
まったく記憶にないので、ただ母を見返した。
「やあね、本当に忘れちゃったのね、一つ目とか、地縛霊とかしょっちゅう見てて、時々見えない子たちとも遊んでたのに」
「わたしが!?」
「そうよ、そういえばいつの頃からか言わなくなってたわね」
思い返してみたけれど、記憶喪失かっていうくらい、子供の頃の記憶が無い。
「・・・・やだ、なんでなんにも覚えてないの?・・・・」
過去の記憶がない。
その事実にわたしは恐怖すら感じた。
青ざめているわたしを見て、母は優しく微笑んだ。
「だったら探してらっしゃい」
「え?」
「この場所を探せば、きっとあなたの記憶も戻るんじゃない? そんな気がする、そのためにおばあちゃんもこの写真をあなたに託したのよ」
「ここへ行けば記憶も戻る?」
「ええ、きっとね」
おばあちゃんが妖精達と過ごした場所。そこがすべての原点なのかも知れない。
そこへ行けば失った記憶も取り戻せる。
その思いはやがて確信へと変わっていった。
わたしが、おばあちゃんの写真を胸にイングランドへ旅立ったのは、それからしばらくのちのことだった。
END
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