第1章

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 グランピングとは、グラマラスとキャンピングを掛け合わせた造語であり、キャンプならではの自然環境のなかで高級ホテル並みの快適さやサービスを体験するという、贅沢なキャンピングスタイルのことであるらしい。自分でテントなどのキャンプ道具を用意する必要がなく、設備の整った施設で快適にキャンプを楽しむことができ、欧米などでは人気が出てきているらしい。 …世界ではそんなものが流行っていたとは。でも、虫嫌いな私にとっては快適な空間でキャンプ気分を味わえるもってこいのものかも… 「この建物は俺とひーちゃんの宿泊施設だよ。一日限定一組しか泊まれないんだぜ。」得意げに夫が言った。  中に入ると、エアコンもきいており快適な温度が保たれていた。一階にはキッチンとリビング。二階にはお風呂とトイレ。三階は寝室だ。建物の内装は南国のバカンスを漂わせるような仕上がりになっている。ガラス張りなのでもちろん全室オーシャンビュー。シャワーで体についた海水を流し、私たちは夕食の支度をした。建物の前にバーベキューの一式とキャンプファイヤー用の薪もセットされており、冷蔵庫に入れてある食材を切って後は焼くだけである。旅先ではこのくらいの手軽さがちょうどいいな。海を目の前に、二人で贅沢なバーベキューを堪能した。まさかハワイで豪華なキャンプを楽しめるなんて思ってもみなかったな。夫のプランに感心しっぱなしだ。バーベキューを終えると薪に火をつけ、キャンプファイヤーをしながら、ひたすらに寄せては返す波の音を聞いた。 「せっかくだから、泳いじゃおっと」  と夫は言い、夜の海へ入った。 「夜の海なんて危ないよ、戻っておいでよ」  と私は忠告したが、 「夜の海に誰の目も気にせず入れる機会なんて、これを逃したらもう一生ないかもよ?ひーちゃんも泳ごうよ」  そう言われてみると、たしかに夜の海に入る機会なんてもう一生来ない気がして私も海へ入った。昼間と違って冷たい。 「ひーちゃん、踊ろうよ」  唐突に夫が言った。 「踊るって、どうやって?なに踊り?フラダンスとか?」 「難しく考えなくてもいいから、ただなんとなくで、気分で踊っちゃおう。」  そう言って差しだされた夫の右手に私の右手を置き、私たちは浅瀬で踊った。 「ハワイのぉーうみでぇー…君とぉーぼくー」
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