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そんな場所がこの世にはあったのか…。ハワイへ来てから、夢と現実が分からなくなってしまうほど驚きの連続である。昨日は満点の星空を眺めながら眠りについたと思ったら、今日は海の上で朝ごはんだ。
私たちがイスに座ると同時に、東の空から日が昇り始めた。「わぁ…」エメラルドグリーンの海とまっすぐにのびる朝日の閃光の美しさに言葉を失う。ウェイターが飲み物を運んできて、グラスに注ぐ。
「君の瞳に、乾杯」
夫がふざける。日本でいったら、縁を切りたくなるほどくさいセリフだが、この絶景を前にするとまるで挨拶くらいの普通な言葉に聞こえてしまうから不思議である。
こうして、私たちはサンドバーで美しい景色を眺めながら朝ごはんを食べた。
島に戻るとお昼からはダイヤモンドヘッドへと向かった。体力にはあまり自信の無い私であるが、道も整備されているため思ったほどは疲れることもなく夫と楽しく登った。登山道から山頂までは1kmほどだろうか、30分ほどで登ることができた。山頂に着くとハワイの綺麗な海と街が360度見渡せた。爽やかな午後だ。
「はい、これプレゼント」夫が突然リュックの中からリボンのついた小さな箱を取り出し、私に渡した。
「何これ?」全く見当もつかないが、リボンをほどき箱を開けると、シルバーリングが入っていた。
「ハワイアンジュエリーだよ。ハワイアンジュエリーってハイビスカスとか亀とか、色んなモチーフがあってそれぞれに込められた想いが違うんだって。この指輪は波の絵が描いてあるでしょ…まぁ、恥ずかしいしこの意味は自分で後で調べて。」
「えーっ。今教えてよ!気になるじゃん。」
そう言っても夫は教えてくれなかったので、さっそくスマホで検索してみた。
「えーと…ハワイでは波が海から幸せを運んでくるとされています。寄せては返す波模様は、『永遠に途切れることのない愛』を表しています…」
ネットの情報を読み終わり、再びダイヤモンドヘッドから見える景色を眺めると先ほどまでは気にもとめていなかった波に目がいった。青く美しい海に幾重にもできた波が海岸へ向かって打ち寄せている。ハワイでは波をそんな風に捉えていたとは知らなかった。そして、夫がその意味を知った上でこのリングを私に贈ってくれたことが素直に嬉しかった。
「ありがとう。大切にするね。」
そう伝えると夫は少し照れながら、優しい眼差しで海を見つめた。
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