321人が本棚に入れています
本棚に追加
「新佐衛門、後は頼んだぞ」
「かしこまりました」
式台まで見送りに来ていた者は伊勢新佐衛門隆資と名乗る一族の者であった。
新九郎には自城である高越山城を父に任されてからは、城の留守を任せる事のできる一族の新佐衛門の他、多数の家臣はいたが、いまだ自身の家族と呼べるものは持っていなかった。
身の周りは児小姓や侍女が仕え、台所回りには下男や婢(はしため)が働いている。
領地の行政には弟の弥次郎や、先程の太郎を筆頭に幾人かの気心の知れた家臣達が居るため不足は感じない。
よそからは『女に興味がないのでは』等と噂も囁かれないでもなかったが、当人はそんな噂も構う事もなかった。
最初のコメントを投稿しよう!