京の都

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『我が身我が根城が不安な時に女房等を持つ馬鹿もおるまい』などと嘯いてもいたが、実の所新九郎、伊勢家とは名ばかりの分家も分家である我が家が潰えても良いと考えているふしがある。  新九郎の伊勢家は室町将軍家に仕える政所執事の伊勢家と血の繋がりがあるとは云っても枝葉の内の末端。本家の主である伊勢貞親から見れば新九郎など遠い親戚にちらと見た顔程度にしか思ってはいないだろう。  軽い家である。そう思っていた。  そして備中荏原の庄にある高越山城の薬医門から日が昇った辰の刻、新九郎一行十数人が京の都を目指して出立していった。
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