京の都

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 広大な平野に鬱蒼とした森が連なり、その中に古式然とした社が建っている。  何を祭っているのか判然としないが、その両側に巨大な杉が二本天に聳えていた。  そしてその根元には一匹の鼠がうずくまっている。  何をするでもなく、しばらく社を見つめていると嵐が来たのだろう、森がざわつき大杉が揺れだした。  すると根元にうずくまっていた鼠が突然に目を覚まし、いきなり杉の根を食い破り始めたのだ。  その光景を見るともなく眺めている内に、瞬く間に二本ともに巨杉を喰い倒してしまった。  倒れた杉のあった空間から見える空には、嵐に流された速雲が渺茫とした天を流れ去っている。  再び根元に目を落とした時、その鼠は美しく力強い虎に変じていた。
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