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太郎から殿と呼ばれたこの男、下剋上の先駆けをし、後の世に戦国の梟雄と呼ばれた北條早雲の若き頃である。
今の名は伊勢新九郎盛時。または長氏とも名乗っていた。この物語の中では新九郎と呼ぼうと思う。
新九郎の所属する備中伊勢家の流れは桓武平氏と言われており、室町御所における政所執事、伊勢貞親が当主となっている伊勢本家の傍流でもある。
所領は備中国荏原庄で三百貫。そこの領主である伊勢盛定を父に持ち、室町御所で足利義政の申次衆を務める伊勢貞道の養子となってから、その口利きで公方足利義政の弟で天台宗浄土寺門跡を務たことのある義尋(ぎじん)改め足利義視(よしみ)の駿河国主申次衆に就いていた。
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