321人が本棚に入れています
本棚に追加
/570ページ
太郎が新九郎の前から去って一刻ほど過ぎた頃、書院で書物を読んでいる新九郎の前に再び太郎が現れた。
「太郎めにございます。参上仕りまいた」
新九郎はふと視線をあげ、手元に開いた書物に栞を入れてぱたりと閉じた。
「太郎か。入って参れ」
新九郎が端坐する書院畳敷きの間は、濡れ縁に面した二方向の障子が開かれている。その濡れ縁に座る太郎の姿が良く見えた。
「ならば」
にじりながら体を座敷に入れて来た太郎、少し膝が入った所で止まり、頭を垂れた。
最初のコメントを投稿しよう!