第1章

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今日はいつもより少し早く帰れたが、家の電気がついていない。 「ゆうと?」 靴を脱ぎ捨て、部屋の電気をつける。ゆうとは部屋の隅に身体を丸めていた。 「…おかえり…ゆうり…」 「ゆうと…」 良かった。倒れていたらどうしようかと思った。ぎゅっとゆうとを抱きしめる。 「…ゆうりくるの…まってたの…きょうは…のまなかったの…」 苦しそうにゆうとはそう言った。カタカタと歯と歯がぶつかる音が聞こえる。我慢はしないでと、あれ程言ったのに。 「明日休みだから、今日は一緒に飲もうね」 「…やったぁ…」 早く飲ませなきゃ。ゆうとが壊れてしまう。 「はい、乾杯」 ゆうとが持つ缶に自分の缶をコツンと当てるとゆうとは微笑んでビールを飲んだ。ゆうとの腕は我慢していた事が痛いくらい分かるほど爪の痕が付きミミズ腫れになっていた。
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