恋をバックパックに詰めて

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彼は美大卒業を控えた22歳で、アジア文化を先攻しているとのことだった。 将来はインテリアデザイナーを目指していて、実際にいくつかの単発の仕事もすでに引き受けており、将来はどうやら有望らしい。 彼のデザインしたインテリアのモチーフにも、そうしたオリエンタルな雰囲気を活かしているようで、素直に「素敵」と思えるものばかりだった。 私も家具とか集めるのが好き、というと彼は身を乗り出して、話はすごく盛り上がった。 「それにしても君はどうしてバンコクにきたの?まして女の子一人でカオサンなんて変わってるね」 「私は・・その・・」 自分探し。なんて絶対言いたくない。 「た・・楽しい事さがしに!!」 彼は一瞬きょとんとした顔になって、すぐにまた、あの子供みたいな笑顔で笑った。 「今は楽しい?無理矢理ご飯に付き合わせちゃったみたいだけど・・」 「楽しい!・・です・・でもどうして私を・・?」 「どうしてって・・」 「いつもこうやって女の子・・声かけているのかなって・・」 地球の歩き方、というガイドブックでも注意事項として書かれていた事だった。 わたしのこの探るような一言が、彼の機嫌を損ねたのは一目で分かった。
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