ウィアード・インベスター

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バカンスを終えると、ウズラは決意した顔つきで男たちを呼んだ。 「一つの悪は滅びたわ。でも、この世界にはまだまだ多くの悪がある。それに苦しむ人がいる。それに殺されてしまう人がいる。私は自分の古巣が腐ってから、世界中のあらゆるものを見て、何人かの仲間とともにあがいて、最後には自分の非力さに絶望してきた。でも、貴方たちとならオグロとも戦えたように、他の悪とも戦える気がするの」 「奇遇だな、俺も同じことを考えてたんだ」 「奇遇ですね。僕もなんです。いやあ、気が合いますね」 笑いが起こる。 「それでね、これからはお互いすぐに打ち合わせできるような場所にいた方がいいと思うの」 「そりゃそうだな。今までは1週間のうち半分って感じだったけど、一緒のところに住んじまった方が何かと都合がいいかもな」 「じゃあさっそく家を見繕わなくては」 「大量の札束を隠せる大金庫、改造車を造れる秘密工場、それにコスチュームとか」 「それは、いらない」 「それは、いりませんね」 「だよな」 また笑いが起こる。 老紳士が食事の準備ができたことを知らせる。 「食いながら作戦会議と行くか!」 長い会議となった。北半球か南半球かで最後まで意見がまとまらなかった。 結局、一年の半々をそれぞれの拠点で過ごすことが決まったのはそれから一ヶ月後。 それぞれの荷物を全て運び終えたのは、更に一週間経った後だった。 魔術師アズ・サランが物語を語り始める。 悪を憎む若い女性と、その女性を支える男、そして僕。 年齢も国籍も肌の色もバラバラで、はたから見たらこれほどおかしな取り合わせはない。 いやはや、ここまでの間柄になるには多くの時間がかかりました。ここに至るまで多くの艱難辛苦がありました。そしてこれからもあるでしょうね。必ずあると思います。 でも、だからこそ、一人あの塔の上で朽ち果てなくてよかった。僕たちはあの闘争を共に生き抜き、真の意味で心友となったのです。 そして、僕たちの奇妙な同居生活が始まった。 それが昨年の5月のことです。 完
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