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それはこの星が生まれて、最初に降った雨のひとしずくのような涙だった。
そこには可能性と希望に満ちた輝きがある。そのひとしずくからこの星の繁栄は始まったのだろうし、同様に、そのひとしずくから彼女たちの歴史は始まるのだ。
想いは伝わっていた。
頬には涙が伝っていた。
彼女は泣いていて、彼の指先がそれをそっと拭う。
夕景に佇むふたりの姿は絵画のようで、眺めるものにやすらぎを与えることだろう。
海岸線には二種類の足あとが続いていた。歩幅の狭い彼女のものと、歩幅の広い彼のものだ。
それは友人同士のふたりの足あとでしかない。
次の一歩からは恋人同士の足あとになるのだ。
彼女の鈴を張ったような瞳はなおも涙にさらされつづけている。
「ごめん、急に泣かれても困るよね、あっ、あの今日はもう帰ってもいいからっ、告白、オーケーしてくれてうれしいよ。ありがとう、ありがとう」
「帰らない。涙が乾くまできみのそばにいるよ」
「でもわたし、泣き虫だよ」
「そうだね」
「ずっと、泣いたままかも」
「だったらずっと、そばにいるよ」
「……もう、また、涙が」
あわてて涙を拭おうとする彼女の肩を、彼がそっと抱きよせていた。
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