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『「泣き虫でよかったとはじめて思った」』 『心の声をでっちあげるな』 『でもさでもさダーリング! A級所持者同士がくっつくのを見るなんて久しぶりだからテンション上がっちゃうよう!』  夕陽を背景にその影を重ねているふたりからほんの五メートルほど離れて、おれたちは立っている。おれたちの歩いてきた道すじに足あとはなく、自身には影もない。  弾む声に隣を見れば、おれよりも頭ひとつ低い背丈の同僚がいた。青い髪だ。群青色といったほうが適切な、意志の強さを象徴する濃い色の髪だった。まっすぐ切りそろえた前髪の下の大きな目がおれを見る。 『えー、シノノメさんにおたずねします。今回、彼にA級ラバーライセンスを与えた理由はなんだったんでしょーか?』  唐突にインタビュアーを気取って、手にしたマイクを向けてくる。いつ出した。 『基本ステータスが、〈家庭環境・レベル七〉〈身体強度・レベル九〉〈顔面偏差値・六十九〉と高い上にあいつは他者への共感を自然におこなっていた。自分を曲げることなく、息をするように相手の気を惹くしぐさをできるというのは才能だ。文句のつけようがない。A級ラバーライセンスの所持にふさわしい男だよ』  いま、告白したのは彼女のほうであるが、彼が彼女に告白されたのはおれが与えたA級ラバーライセンスの効力があったからだ。
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