第1章・失恋

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川沿いの遊歩道に散らばった桜の花びらは雨に打たれ人々に踏まれ、薄汚れた塊になっていた。 木に咲き誇っていた時の美しさは見る影もない。 梅雨でもないのにもう四日も雨は続いている。 今日は風も強く、傘をさしていたのに左肩は冷たく濡れている。 どうしよう……。 さっきは咄嗟に「仙台へ行く」などと口走ってしまったが、聡史との電話を切った途端、気になるのは悠斗のことばかり。 悠斗と仲直りをして、もう一度やり直したい。 何とかやり直せないだろうか。 私は行く当てもなくアパートの部屋を飛び出してきた。 いや“追い出された”と言った方が正しいだろう。
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