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街道にだって弱いモンスターだったら出る。
それを退治しながらの旅だ。
俺はモンスターが完全に姿を消した事を確認して、目にかかる前髪を払いのけた。
「スゴいよ、強いのね!」
輝く笑顔の少女。
「大したことない。急ぐぞ、夜になっちまう」
うららちゃんは歩くのが遅い。
どうやら一生懸命らしいが、このままじゃ安全な次の村に、夜までにたどり着けそうになかった。
しかも、どんどんペースが遅くなってる。
「う、うん」
(どこかで夜営できそうな場所を探さないとな…)
どんな所で育ってきたのか、うららちゃんはモンスターを見たことが無いようだった。
「お前さ」
「うららちゃん」
面倒くさい女だ。
「うららちゃんは、どんな所から来たんだ?」
「今朝話したの聞いて無かったの…?」
疲れているのか、声に今朝程の元気が無い。
「アタシがいたのは東京で、公園を通ろうとしてつまづいたら知らない森にいたの」
「トウキョウってどこだ?」
知らない村の名前だ。
うららちゃんは知らないの?とでも言いたげに大きなため息をついた。
「…日本よ。日本の首都」
ニホンなんて地名を俺は知らない。
この国の首都は王都クロウェルドだけで、異国の首都にも『ニホン』だとか『トウキョウ』なんて聞いたこともない。
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