旅の基本は歩くこと

2/6
前へ
/235ページ
次へ
街道にだって弱いモンスターだったら出る。 それを退治しながらの旅だ。 俺はモンスターが完全に姿を消した事を確認して、目にかかる前髪を払いのけた。 「スゴいよ、強いのね!」 輝く笑顔の少女。 「大したことない。急ぐぞ、夜になっちまう」 うららちゃんは歩くのが遅い。 どうやら一生懸命らしいが、このままじゃ安全な次の村に、夜までにたどり着けそうになかった。 しかも、どんどんペースが遅くなってる。 「う、うん」 (どこかで夜営できそうな場所を探さないとな…) どんな所で育ってきたのか、うららちゃんはモンスターを見たことが無いようだった。 「お前さ」 「うららちゃん」 面倒くさい女だ。 「うららちゃんは、どんな所から来たんだ?」 「今朝話したの聞いて無かったの…?」 疲れているのか、声に今朝程の元気が無い。 「アタシがいたのは東京で、公園を通ろうとしてつまづいたら知らない森にいたの」 「トウキョウってどこだ?」 知らない村の名前だ。 うららちゃんは知らないの?とでも言いたげに大きなため息をついた。 「…日本よ。日本の首都」 ニホンなんて地名を俺は知らない。 この国の首都は王都クロウェルドだけで、異国の首都にも『ニホン』だとか『トウキョウ』なんて聞いたこともない。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加