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「は、はい!?そんなこと知らないんですけど!?」 「ごめん!うざいって分かってるだけど!でも、今だけは…」 消えいるような声で、彼は一言。 「一人になりたくない」 そんなことを呟いた。 「…え、えぇ…」 俺はどうしようか迷う。 そして彼の意気消沈した姿を見ていると何だか申し訳ないとも思った。 いや別に俺が申し訳なく思う必要など一ミクロンたりともないわけではあるが、そういうのは別として、彼が幽霊であるからに、彼もまた一人の人間だったのだ。 「……よく分からんが、じゃあ一晩だけここに泊めてやる」 「…ありがとう」 泊めてやる、なんてそもそもここは俺の部屋でもなければ病室なわけであるが、まぁこの際大目にみて頂くとしよう。 ごめんなさい病院各位の皆様、俺はどうやら病院に幽霊を招いてしまったようです。 縁起が悪い? 俺もそう思います。 「申し遅れた。俺は伊勢 恵比寿。よろしくな!えっと…」 「魚谷海辺。海辺でいいよ」 「分かった。じゃあ海辺、よろしくな」 「お、おう。じ、じゃあ…エビちゃん…よろしく」 「エビちゃん!?」 「ば、馬鹿!親しみを込めたニックネーム!愛称だよ!俺なりの気遣いに気付けバーロー!」 「……ふふふ」 「な、何が可笑しい!?」 「いやごめん。何かその、こういう久しぶりだなって…」 恵比寿は楽しそうに笑顔を向けた。 その笑顔は生者の笑顔と何ら変わりはなく、むしろイケメン効果も相まって俺をキュンキュンさせる。 彼が死者で幽霊で、なんて何かの冗談かのようだ。 「海辺、本当にありがとう」 「ば、馬鹿野郎!別にお前のことなんてどうでもいいんだからな!勘違いすんなよ!もう寝るから!」 俺は布団を被る。 心臓はバクバクと鳴るばかり。 何だこれ、可笑しいな。 「うん、おやすみ。海辺…」 それは、7月の半ば。 夏が始まるそんなある日の出来事。 俺と恵比寿が出会った日の出来事だった。
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