第1章

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壁ドン(かべドン)とは、壁に大きな衝撃を加え「ドン」という衝撃音を発させる行為であるが、使用者によって以下のとおりまったく異なる意味として用いられることがある。 Wikipediaには壁ドンはこう書いてある。 女子の憧れ壁ドン。 これを加藤様にされた日には多分昇天すること間違いなし。 「おい。佐久間」 幻聴かしら?加藤様の声が・・・ 「会議中にボケるたぁいい度胸してるじゃないか!ああ?佐久間」 ズイっと目の前に端正な顔が・・・いや、眉間に皺が寄った状態の般若のようなお顔が目の前に。 加藤様の声で今が会議中で自分が議事録を取っていることを思い出す。 「ボケてません!きちんと聞いてました!」 敬礼せんばかりの勢いで立ち上がる。 「だったら確認とらなくても大丈夫なんだよな?」 「勿論です!」 嘘です。全然聞いてませんでした。 でもそんな事口が裂けても言えません。 これがばれたらきっと加藤様に本当に口を裂かれてしまいます!ああ、でも裂かれたいかも・・・ 「それでは営業会議は以上となります。 後日、本日会議の資料を佐久間より配布致しますので資料が届き次第目を通してもらって不明な点は加藤までお願いします」 そう言って会議が終わった。 そして私もオワタ。 どうしよう。会議の事。 壁ドンなんて考えてる場合じゃなかった! 真っ白な私のノート。 PCの画面は壁ドンの文字しか打たれてない。ああ、大ピンチ! 加藤様はとうの昔に会議室を後にしてる。 これ、本当にどうしたらいいんだろう。 後日って言ったけどどうせ明後日くらいまでにはまとめて提出しないとヤバいよね。 これは本当に口を裂かれる覚悟で加藤様に尋ねないといけないかもしれない・・・ 筆記用具とPCを片づけて会議室を後にする。 ああ、足が全く動かない。処刑台に向かう囚人はきっとこんな気持ちだったんだろうな。 死ぬ前に一度だけでも壁ドンをされたかった・・・ 「あ、そうだ佐久間さん!」 私の数歩先を歩いていた営業部の人が突然振り返ったのに驚いてバランスを崩した私はそのまま壁に激突。 壁ドンじゃなくて壁ゴンだよ、これじゃ。 「うあ!ごめん。大丈夫?俺が急に振り向いたから!」 ああ、営業部の若きホープと言われてる、新藤 守さんが心配そうな顔をして私を覗き込む。 ああ、この人もイケメン。
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