第1章

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何故か今日に限って皆様お早いお帰りで。 いや、とってもいい事なんだけど。 会議の内容を新藤さんに確認しながらPCを打つ私。 それにしても・・・新藤さん、距離が近いような。 ああ、でも外回りしてきたとは思えないほど爽やかな香り。 イケメン最高! フンガフンガと匂いを嗅ぐ私。 「あ、ごめん。匂いきつかった?」 勘違いした新藤さんが謝る。 「違います。 新藤さんの香りとっても良いですね。それ何の香りですか?」 「何だったかなぁ」 腕部分の匂いを自分で嗅ぎながら新藤さんが答える。 「今日にでも家に帰ってみて明日教えようか?」 「いえ。そんな。ただ気になっただけなので」 気を遣わせたみたいで申し訳ない。 それにしてもイケメンはやっぱり優しいんだなぁ。 こんな私の素朴な疑問にも真剣に答えてくれようとするなんて。 その後も新藤さんの香りに酔いしれながら議事録を作り上げて行く。 さすが若手ホープ。要点を分かりやすくしかもこう作った方が見やすいなどとアドバイスを沢山くれた。 出来る男はなんでもスマートなんだな。 加藤様もこんな感じ・・・いや、あの人は私に教えると言うより調教に近いかな。 ああ、残念。今日のデート。 ふと思考があさっての方向に飛んで行った。 新藤さんはそんな私に気が付いたのか『今日はデートだった?』と尋ねられ二人の関係を周りに話していいものか躊躇した私は『相手が居ませんよ』と笑ってごまかした。 何故か微妙な空気に包まれたフロア。 私変な事言ったかな? とりあえず最後まで終わらせてしまおう。 キーボードを打つ手がさっきよりも若干早くなったような気がする。 「佐久間さん、休憩しようか?」 いつの間に居なくなったのか全く気付かなかった。 手に缶コーヒーを二つ持った新藤さんが立っていた。 「ありがとうございます」 「凄い集中してたね。何が良い?って聞いたんだけど返事がなかったから勝手に買ってきちゃったけど、これ飲める?」 微糖と書かれた缶コーヒーを私に差し出す新藤さん。 若干コーヒーは苦手だけど、せっかくの好意を無下にするほどの人間ではないので素直に頂く。 「ごめんね。苦手だったかな?」 ばれないように飲んだつもりだったけれど、やっぱり苦いって顔をしていたのか新藤さんが謝る。 「少し苦手ですけどでもこれは飲みやすいです」
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