第1章

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そう言って缶の半分ほどを一気に飲む。 「眠気も覚めましたし、あと少しで終わるので頑張れそうです」 苦さで目が覚めたのは事実なのでそう告げて再びPCに向かう。 時折、新藤さんの指導が入り無事出来上がった。 「ありがとうございました。お蔭で早くできました。 あ、これ捨ててきますね」 呑み終わった新藤さんの缶とまだ半分残ってる自分の缶を持って給湯室へと向かう。 流しで残りのコーヒーを『ごめんなさい』と言いながら捨てて、ゴミ箱に缶を捨てる。 「佐久間さんは甘い方が良かったね」 急に声をかけられて『キャ』と小さな悲鳴を上げる。 フロアに残してきた新藤さんがすぐ背後に立っていた。 「驚かせちゃったかな?」 笑顔で言うのに、何故か怖い印象の新藤さん。 さっきまでと違う雰囲気に思わず唾を呑みこむ。 「佐久間さん、彼氏居ないって本当?」 一歩近づく新藤さん。 「あ、えっと・・・」 「やっぱり居るんだね。残念。 でも、人の物って欲しくならない?俺、どっちかって言うと人の物が欲しくなる人間なんだよね」 全く笑ってない目で笑顔を作る新藤さん。 斗貴子さん!これがあなたの忠告だとしたらもっとハッキリと忠告してほしかった! 助けて欲しいが誰も居ないフロア。うん。誰も居なかった。 普通なら一人や二人残ってても可笑しくないのに今日に限って誰も居ない。 どうしよう。 狭い給湯室、近づく新藤さん。数歩縋った私の背後はもう壁。 『ドン』と 新藤さんの右手が私の左ほほの横の壁に手を付く。 ふぁああああ!これが世に言う『壁ドン』ですね! って、想像以上に顔が近い! 新藤さんの顔が真正面にあってどうしていいのか分からない。 「佐久間さん、可愛いってよく言われるでしょ?」 イケメンの香りとオーラでクラクラしそう。 襲われそうにな状況なのに抗えない魅力がてんこ盛り。 だけど、やっぱり加藤様の方がイケメンだし『壁ドン』も迫力があるだろうなぁ。 と、冷静になる。 「片づけも終わりましたし、帰りましょうか?」 イケメンオーラを浴びながらも気持ちをしっかり持って新藤さんにそう告げると、ビックリした顔になる。 「本当に・・・可愛い人ですね」 今のどこに可愛い要素があったのか全く分からないけれど、新藤さんが場所をどけてくれる気配がない事は分かった。
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