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自分の胸に手を当て、渚の背をまっすぐと見据える。
「今は消し方がわからない。わからないから渚とは居られない。渚が好きだから…本当に幸せになって欲しいから…俺が傷つけるのは耐えられないから…」
俺は、幸せにはしてやれない。
そのことに、やっと気づいたから。
「ズルいよ……櫻井くん……そんなこと言われたら何も言えないじゃない。そんな風に想われてるなんて知ったら…」
渚は唇を悔しそうに噛みしめた。
「ごめん。」
「私、…やっぱり振られちゃうんだね。」
「ごめん……」
俺は思わず渚を後ろから抱きしめた。
こうしていないと渚が壊れしまいそうで…
回した手に、暖かな雫が落ちる。
「櫻井くん、教えてあげる。」
渚の声は震えていた。
俺の頬にも静かに一筋の涙が流れた。
「櫻井くんがその子を忘れられないのは、気持ちを伝えてないからだよ。」
「もしいつか。その子に会えたら絶対に伝えて。」
「それでもし……想いが伝わらなかったら、その時は……」
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