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彼女と歩く桜の並木道。
今はお互いスーツだけれど、初めて彼女を見たときは、お互い制服だった。
俺は高校生で、彼女は中学生。
年齢差は大したことないのに、高校生からみた中学生は酷く子どもっぽくて、恋愛の対象になんか絶対に見れないと思っていた。
それ以前に、愛だの恋だの騒ぐ理由が理解出来なかった。
それは、俺が本気で人を好きになったことがないから。
生まれつき、顔の半分に出来た痣を隠すように伸ばした前髪も手伝って、性格もどちらかと言えば大人しかった。
そんな俺を好きになる子だって皆無だ。今思えば、好きになることを恐れていたのかもしれない。
好きになったところで、実る可能性がなかったから。
「櫻井って運動神経いいのな?体育一緒に組もうぜ!」
高校に入学して、一ヶ月ほど経ったある日、クラスメイトの高岡 颯斗が話しかけてきた。高岡はいわゆるイケメンってやつで、同級生、上級生問わずよく呼び出されているのを知っている。
「別にいいけど。」
「やった!ちなみに部活何やってんの?」
「水泳部。」
「へー、どおりでいい筋肉してると思った!」
「……。」
「あ、何その目。別にそういう趣味はないから!」
「何だそれ、分かってるし。」
くっ、と俺は高校に入って初めて笑った。
「なんだよ、笑うと可愛い顔してんじゃん、ってそういう意味じゃないからな!」
「やめろ、腹が痛い…!」
高岡とはすぐに打ち解け、自然と登下校も一緒にすることになった。
──最初に彼女の視線に気づいたのはいつだろう。
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